第2の世界
「休みの日なにしてんの?」
よく聞かれる。
「本読んだり、映画観たり、かな。たまに友だちとも飲んだりするけど。」
「えーーー、なにそれー。」
うるせえ。
なんだ、そんなに休みの日は誰かと遊んでなきゃいけないのか。そんなにキラキラした写真をインスタに載せないといけないのか。
昔からあまりテンションが上がることは少なかったし、1人のほうが気が楽だった。たまに寂しくなって誰かを誘うけど、誘える友だちは2人ぐらい。そんなもんだ。それぐらいが丁度いい。
最近は休みも演出しなくちゃいけないらしい。
君の本当ってなんなんだろう。
いや、それは僕もか。僕の本当ってなんなんだろう。
こんなかっこつけたことを言いながら、誰かの投稿に自分の写真が載ったりすると嬉しい。
いいね
自分がたまに投稿したときには、この数を気にしてる。
いいね
僕が本当に楽しいときは、こんなときじゃない。
綺麗な景色をバックに、何人かでふざけているときじゃない。
気心知れた数少ない友だちと、2人で飲んでゆっくりしているとき。
いいね
この言葉は、誰が作ったんだろう。
いいね
本当にこう思ったときは、もう終わっている。
気づいたとき、もう目の前にはない。シャッターチャンスなんて、ない。
アプリを開くと出てくる、虚構の世界。巨大なプラットフォーム。この世界で一番力を持ってる存在。取り込まれた。君も、僕も。
いいね
この世界では、これを集めたやつが偉いらしい。お金と一緒だ。仮想通貨みたいなもんか。
僕はここでも貧乏だ。
「お金なんかなくてもいいよ」これは、お金を手にした人間にだけ許された発言らしい。
いいねなんて、いらない。
そんなこと、僕には言えない。
言ってよ。言って。
いいね